市川海老蔵が初老の実年齢でそう違わない瑛太と親子関係を演じるのは、この時代ではありえない話ではなかったとも思うが、少し違和感を覚える。
それでもあえて海老蔵なのは、やはり最後の大立ち回りを彼にやらせたかったのだろうなと納得。
大人数を相手に斬り合う、正確には海老蔵は切らずに訴えかけるのみの大立ち回りでしかないが、これを一人で引き受けて画として成立させるには彼に演ってもらいたかったのだろう。
貧困極まりながらも、数少ない家族の愛を感じる幸せな瞬間を生きがいにしているのは特異な存在ではない。
主人公は、平凡な人間として建前社会への怒りと批判を鋭く突き立てる。
太平の時代には本当の侍など数少ないはずでありながら侍の建前に固執する社会に納得できずにその心情を訴えながらも、自分は侍であり続けていることを選んでいる主人公の死に様は悲しく思えた。
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