シリーズ50周年記念作品ということで、過去シリーズ作品にオマージュをささげたプロットがふんだんに織り込まれているので、旧シリーズのファンにもうれしい作りになっている。
ダニエル・クレイグのボンド作品としては過去の2作品の流れをくんではいるが、前作よりも人間ドラマの部分の比重が小さくなって、アクション映画の側面が大きくなっているように思う。
とはいいながら、ストーリーはMを母親に、敵役シルヴァとボンドがその対照的な子供たちと見立てていて、母親に対して屈折した恨みを抱くシルヴァとあくまでも忠誠をつくし続けるボンドの対比を骨子としている。
それを土台に組み立てられた両者の心理と思考方法の違いを際立たせる手法は印象的だった。
ただ、先の先まで読みつくしたシルヴァが最後の詰めでしくじるあたり、説得力のある展開とは思えなかったところは残念だった。
前振りはあったとはいえ、シルヴァのああいう最期も気が利いているようには思えなかったなあ。
長崎の軍艦島がロケ地として使われていたけど、知っている人からすれば唐突に表れるので驚いただろう。